プロトタイプ編 ~プロトタイプの本意~
2007年より、本格的にプロ獲得に乗り出した。
AKIRAが契約するプロへの要望は、早い段階ですでに決まっていた。
プロとしてのファンサービスが出来ること。
クラブ開発への意欲があること。
末永いお付き合いができること。
そして我々社員と同様に、AKIRAを愛してくれること。
私が欲したのは、「クラブを通してAKIRAと共に歩んでくれる」プロだった。
そしてこの時点で、契約したプロ専用のモデルを作ることも視野に入れていた。
契約金ありきでプロと契約するのではない。
「このプロだから」こそ契約するのだという覚悟と信頼の証を、形にして示すためだった。

実際にシード選手と話を始めると、プロパー品のクラブの評価は高く、多くの選手にAKIRAのポテンシャルを認めていただけた。
だが実際に試合で使う際には、クラブに対し様々な調整を施す場合が多い。
プロパー品をそのまま使用することはあまりない。
そのために、プロの好みに合わせて柔軟な対応が出来る、懐の深さをもっていたいと考えた。
ゴルファーはクラブに関して、好みの顔、好みの打感、好みのフィーリングなど、十人十色のこだわりがある。
そのこだわりにより柔軟に対応していくために、どんな手段が用意できるだろう?
そうして考え出したのが、ヘッドパーツの常備だ。
すでに完成しているクラブに要望を反映させるための「調整」という手段。
そこに、要望に合わせ1から「作製」するという手段を加えたのだ。
「調整」と「作製」、この二つを積み込んだツアーバスを前に、それでもなお不安が残った。



まだ足りないものがある。
まだ積めるものがある。
内部からではなく外部から、積み込める財産。
それはプロの好みを知りつくす、経験豊かなクラブデザイナーという財産だった。
今から走り出そうとする私たちの熱意を汲み取り、その豊富な知識を貸そうと手を差し伸べてくれた存在があったことは僥倖だったと言える。
そしてついにツアーバスが走り出した時、私たちが欲したものが形を成した。
今までのプロパーラインにこだわらず、要望に対し柔軟な対応を行い、その対応のノウハウと知識をプロパー品に生かしていくという循環。
プロゴルファーの恩恵をアマチュアゴルファーが受けることが出来る理想的な道筋が、この時はっきりと作られたのだった。

こうして、ひとつの道が出来上がった。
だが私はそこに、もうひとつ作り加えたいものがあった。
道しるべだ。
行く先を見据えるための、基準となるしるべ。
行く道を選ぶ時の、基準となるクラブを用意したかったのだ。

現在、世に出回っている多くのクラブは、そのほとんどが特効薬のようなものだと思う。
例えばスライサーには、スライスが出ないようフックフェースのクラブを。
例えばフッカーには、フックが出ないようオープンフェースのクラブを。
それぞれの症状に合わせた薬は、勿論、必要なものである。
だが、いつも薬を服用していることの弊害はないだろうか?
自分の正しい状態を見失ってはしまわないだろうか?
スライサーであればスライスが出る。
フッカーであればフックが出る。
自分の調子が悪いとき、どのように調子が悪いのかと教えてくれる、素直なクラブが必要なのではないかと考えた。
本人の体の動きがありのままヘッドに伝わり、そしてボールに伝わるクラブが。

PROTOTYPE開発の骨組みはこの時点で固まった。


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